FXの取引では、いくつもある通貨ペアの中から自分のトレードスタイルに合う銘柄を選んでいきます。
[aside type=”normal”]通貨ペアとは?
売買する2国の通貨の組み合わせのことで、「米ドル/日本円」「ユーロ/スイスフラン」というように、「/」で区切って2国の通貨ペアを表します。[/aside]
どの通貨ペアにも、共通して見られる値動きの特徴があるのです。
その特徴を知っていれば、自分が実際に取引する時間や得意な戦略から、自分に最も適した通貨ペアを選択することができるようになります。
さらには、不要なリスクを避け、不必要な損失をせずに済むはずです。
本記事では、全通貨ペアに共通する値動きの特徴と、そこから導き出される投資戦略について詳しく解説します。
Contents
1.指標の発表後に大きく動く
通貨レートは、経済指標の発表後に大きく動きます。
[aside type=”normal”]経済指標とは?各国の公的機関等が発表する、経済状況を構成する要因(物価、金利、景気、貿易など)を数値化したもです。
この指標から、経済の現状や過去からの変化を把握することができます。[/aside]
その理由は、トレーダーやファンドマネージャーが経済指標を売買判断の基準として用いているからです。
ただし、発表された数値が予想通りであったり、想定の範囲内であればほとんど動かないことも多いです。
逆に予想とかけ離れた数値が発表されれば、一瞬で凄まじい勢いで動くことになります。
経済指標として重要視されやすいのは、以下のような指標です。
指標 | 説明 |
消費者物価指数 | 消費者が実際に購入する時の商品の小売価格(物価)の変動を表す指数。 |
PMI | 購買担当者景気指数のことで、企業の購買担当者から新規受注や生産、雇用の状況について聞き取り調査し、景況感について結果を数値化したもの。50が判断基準となり、上回れば景気拡大、下回れば景気減速と考えられる。製造業、非製造業、総合などでそれぞれ数値化される。 |
耐久財受注 | 米国内で用いられている指標で、企業の耐久財の新規受注額を集計したもの。民間設備投資の先行指数として注目される。 |
製造業受注指数 | 米国の製造業企業の新規受注を数値化したもの。前回の数値と比較することで、生産活動が拡大傾向にあるのか縮小傾向にあるのか判断する。 |
経常収支 | 国際収支の基準の一つで、外国とのお金の出入りを表す。一般的にその国の経済としては黒字である方が望ましい。 |
政策金利 | 中央銀行の短期金利を指す。景気が良い時は利上げされ、景気が悪いと利下げされる。利下げされると金融市場に資金が流入するため、景気刺激になると一般的には考えられている。 |
GDP | 国内総生産のこと。一定期間内に領土内で生産された物やサービス等の付加価値の総額を指す。前年比でGDPが大きいほど経済成長していると捉えられる。 |
失業率 | 労働力人口に占める失業者の割合で、失業率が高まれば景気が悪く、失業率が下がれば景気が回復していると考えられる。非常にインパクトの大きい指標。 |
鉱工業生産 | 鉱業・製造業部門の生産動向を数値化した指標。各国で算出方法が異なるため、国別の比較は難しい。基準年を100として数値化される。 |
他にも経済指標は多々ありますが、国ごとに名称が違ったり、国独自に算出している指標もあるので、取引する通貨ペアを決めたら、その通貨ペアに大きな影響を与える指標について学ぶ必要があります。
下は、イギリスのGDPとサービス業指数が発表された直後の、ポンド円(GDP/JPY)の値動き(1分足)です。
前期比でGDPは+0.4%、サービス業指数は+0.7%と値を伸ばしてきており、イギリス景気が上向いていることを示しています。
チャートから、GDPとサービス業指数が発表された直後、ポンドが急速に買われていったことが分かります。
このように、指標の発表直後に値が動くこともあれば、発表されてから30分程度経過してから動き出すこともあります。
と言っても、その場合は、指標の発表によるものなのか他の影響によるものなのかは判断できないことも多いのです。
2.一定期間の値動きの幅が等しくなる
通貨ペアの値動きには、ある期間において同じような値幅で動くことが良く見られます。
例えば、急落した直後に同じ幅だけ急騰したり、その逆もあります。
また、通貨レートが同じ値幅で上下を繰り返すこともあります。
下の図はユーロ円(EUR/JPY)の1分足チャートです。
上がっては同じだけ下げ、下げては同じだけ上げ、ということを短期間のうちに何度も繰り返していることが分かります。
このような値動きになるのは、売買の決め手となる指標の発表が無く、トレーダーたちの間で明確なトレンド認識が無い場合が多いです。
また、チャートでは大きく上下しているように見えますが、実際には20~30pips程度を上下しているだけの小さな値動きです。
これは、いわゆるレンジ相場です。
このリズミカルな変動を利用して細かく儲けを出していくというのも、一つの手法です。
とは言え、スプレッドを考えると、あまり小さな変動では売買コストが大き過ぎてほとんど利益にならないので注意が必要です。
[aside type=”normal”]スプレッドとは?買値(Bid)と売値(Ask)の差。[/aside]
3.重要指標発表時には”だまし幅”が大きくなる
通貨レートにとって重要な指標が発表された時の”だまし幅”は、非常に大きくなることがあるので注意が必要です。
“だまし”とは、例えば発表された指標は通貨が買われる方向の結果を示しているのに、一時的に通貨が売られてしまうことを指します。
FX取引においてだまし幅が大きいと、損切に指定した価格まで達してしまうことがあり、せっかくの儲けのチャンスを断ち切られることになります。
3-1.“だまし”がおきる理由
“だまし”が起きる理由は、正確なところは分かっていません。
よく言われるのは、大資金のトレーダーが一時的に売り注文を浴びせて他のトレーダーを損切にひっかからせ、値が下がったところで買い戻して利幅を稼ぐ、であるとか、単にトレーダー同士の売買の攻防の結果である、などです。
最近では、コンピューターを使った高速取引の影響が大きいとも言われています。
高速取引では、アルゴリズムによって一秒以内に何度も売買を繰り返し、短時間で値が大きく動く時の振れ幅をさらに激しいものにしています。
下は、ユーロ円(EUR/JPY)の1分足チャートです。
21:30に、アメリカのGDPや新規失業保険申請件数などの各指標が発表されています。
これらの指標が発表された瞬間、通貨レートは瞬間的に円高方向に動き、すぐに円安方向に転換しています。
指標発表直前に通貨レートに近い価格で損切りを設定していたら、この値動きに巻き込まれて損切されていたでしょう。
3-2.“だまし”に引っかからないためには
“だまし”に巻き込まれないためには、重要指標の発表時にポジジョンを持たないのが一番です。
そして、指標発表後にある程度トレンドが明らかになって来た時点でエントリーするのです。
しかし、指標の発表直後に大きく値が動くのを無視するのは、もったいないように感じてしまう人もいるでしょう。
あまりおすすめはしませんが、どうしても指標前後の値動きで勝負したいのなら、レバレッジを下げ、損切幅を広く取ることで”だまし”に巻き込まれないようにすると良いでしょう。
4.急騰後は急落しやすく、急落後は急騰しやすい
通貨レートは短期間で急激に値が動くと、直後に反対方向に急激に動くことがよくあります。
従って、順張りで相場に臨む場合は、急激に動いた後はしばらく様子見をして相場が反転しないことを確かめてから、通貨を買い付けた方が良いです。
一方で、逆張りで相場に臨むなら、急激に動いた時こそ通貨を買い付けるチャンスです。
通貨レートが切りのよい価格帯や過去の天井、底値で留まったらすかさず買いを入れると良いでしょう。
下の図はユーロ円(EUR/JPY)の1分足チャートです。
8:50に日本国内企業物価指数が発表されたあと、ユーロ高・円安方向に一度動いた後、ユーロ安・円高方向に一気に進み、その後再びレートが動く前の水準にまで急速に戻してきています。
結局、レートは動いたものの、ほぼプラマイゼロの水準で落ち着きました。
このように、急速に値が動く時は逆方向に同じくらい動く可能性があることを常に念頭におき、売買の判断をする必要があります。
5.自国の株式市場と連動する
通貨のレートは、自国の株式市場の代表的な指数と強く連動します。
日本で言えば、最近は日経平均株価が上昇すれば通貨は円安方向に進みます。
逆に、通貨のレートが株式市場に影響を与える場合もあります。
例えば日本の場合、通貨が円高方向に動くと日経平均は下落します。
これは日本が輸出大国であるからで、円高は自動車などの輸出製造業にとっては痛手になるからです。
とは言え、常に通貨ペアと株式市場の指数が連動するわけでもないのです。
日経平均株価が上昇しているのに、円との通貨ペアが全く動かないときもありますし、逆に円高が進んでいるのに日経平均株価が全く動かないこともあります。
従って、日経平均株価もあくまで参考指標の一つとして考えるくらいにしておく方が良いです。
下は、日本225種株価指数(日経平均とほぼ同じ、上側)と米ドル円(USD/JPY、下側)の1分足チャートです。
多少の違いはありますが、二つのチャートはほぼ同じような値動きをしていることが分かります。
お互いに小さな変動までは反映されませんが、大きく値が動く時はほぼ例外なく連動した動きをしています。
リアルタイムで値動きを見ていると、どちらが早いということもなく、ほぼ同時に値が動いている様子が見て取れるでしょう。
6.アメリカの経済指標に大きく影響を受ける
アメリカの経済指標は、基本的に全通貨ペアに大きな影響を及ぼす為、どの通貨ペアで勝負するにしてもアメリカの経済指標は最も重要な指標として注目する必要があります。
以下は、2016年のGDPの上位10ヶ国です。
順位 | 国名 | GDP(10億USドル) | 割合(%) |
1位 | アメリカ | 18,569.10 | 24.7 |
2位 | 中国 | 11,218.28 | 14.9 |
3位 | 日本 | 4,938.64 | 6.6 |
4位 | ドイツ | 3,466.64 | 4.6 |
5位 | イギリス | 2,629.19 | 3.5 |
6位 | フランス | 2,463.22 | 3.3 |
7位 | インド | 2,256.40 | 3.0 |
8位 | イタリア | 1,850.74 | 2.5 |
9位 | ブラジル | 1,798.62 | 2.4 |
10位 | カナダ | 1,529.22 | 2.0 |
全世界合計 | 75,176.74 | 100% |
アメリカだけで24.7%、つまり全世界の4分の1の経済規模を誇ります。
「アメリカが風邪をひけば、世界が風邪をひく。」
とまで言われているのです。
6-1.アメリカ経済が世界に及ぼしてきた影響の歴史
1929年10月24日、後に「暗黒の木曜日」と呼ばれるようになるニューヨーク株式市場での株式の大暴落は、世界中で企業倒産、銀行の閉鎖、失業の連鎖を引き起こし、果てには不況を打ち破るために軍国主義・ファシズムの台頭を許して第二次世界大戦にまで発展しました。
1987年10月19日、ブラックマンデーと呼ばれるニューヨーク証券取引所が発端の株価大暴落によりバブルは崩壊し、世界中で長年に渡る景気停滞を招きました。
2008年9月15日には、アメリカの投資銀行であるリーマンブラザーズが破綻し、後にリーマンショックと呼ばれる世界的な金融危機に陥りました。
特に、個人のFX取引が盛んになっていた2008年には、リーマンブラザーズの破綻により為替が大変動し、金融資産を全て失ってしまったどころか莫大な借金を背負って破産した個人投資家も少なくありません。
6-2.アメリカ経済で特に注目される指標
最近では上記ほど大きな変動はないものの、アメリカの失業率および非農業部門雇用者数などの指標は最も注目される指標であり、世界中の株式市場、為替市場に大きな影響を及ぼしています。
下は、アメリカの失業率および非農業部門雇用者数が発表された直後の米ドル円(USD/JPY)の1分足チャートです。
失業率と非農業部門雇用者数の発表直後に急速に円高になり、その後も値を戻すことなく円高が進み続けている様子が見て取れます。
共通する特徴と個別の特徴を知ることが大切
FX取引で安定して利益を出し続けるには、全通貨ペアに共通して見られる特徴と個別の通貨ペアに見られる特徴を知り、対処することが求められます。
ユーロ円(EUR/JPY)とカナダドル円(CAD/JPY)で共通して通用する戦略もあれば、米ドル円(USD/JPY)とユーロ米ドル(EUR/USD)では全く異なる戦略を立てなければならないこともあります。
さらに、それらの特徴も時期によって変化し、昨日通用した戦略が明日通用しない場合も少なくありません。
常に為替と向き合い、現在どのような値動きの特徴がある環境なのか肌で感じることができれば、自ずと適切な戦略が見えてくるでしょう。
経済指標のスケジュールを把握しやすい証券会社
FXトレーダーにとって、経済指標を効率良く集めることは相場に挑むのに必須のスキルです。
経済指標は、各FX会社や証券会社のサイトを見れば大抵は提供されていますが、見やすいかどうかはまた別問題です。
GMOクリック証券が提供しているFXトレーダー向けの「経済カレンダー」は、経済指標の発表スケジュールが把握しやすいのでおすすめできます。
「経済カレンダー」では、毎日の経済指標やイベントの発表スケジュールが一覧でまとめられており、いつ、どんな指標が発表されるのかが一目瞭然です。
また、過去に遡ってデータを見ることもでき、発表された指標とその時の通貨ペアの値動きを見比べて、その指標がどんな影響を為替相場に与えたのか知ることもできます。
指標ごとに、重要度が★1~★5までで評価されており、影響の強い指標についても知ることができます。
各指標が為替相場にどんな影響をあるのかよく分からないFX取引初心者には、特におすすめできます。
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次に、投資指標の重要性と読み方について記載していきます。
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