ユーロドルは世界の基軸通貨である米ドルと第二の基軸通貨と言われるユーロの通貨ペアです。
取引量は世界一で、一度動き出すと力強いトレンドを維持するという特徴があります。
テクニカル分析に従いやすいという性質があり、テクニカル分析が得意なトレーダーには利益を上げやすいとして人気の通貨ペアです。
本記事ではユーロドルの値動きの特徴と投資戦略、それぞれの通貨の特徴とユーロドルそのものの値動きについての注意点、適した投資戦略などを解説していきます。
Contents
ユーロと米ドルの特徴
ユーロと米ドルは共に世界の様々な地域で使われている基軸通貨です。
まずはそれぞれの特徴を確認しましょう。
ユーロの特徴
ユーロは1991年1月1日に決済用の通貨として導入されました。
この時点では現金としてのユーロは存在していませんでしたが、3年後の2002年1月1日に現金としてのユーロも発行されるようになりました。
現在はヨーロッパの25カ国において使用されています。
ユーロは準備通貨としては米ドルの次に重要な地位を確立しており、第二の基軸通貨と呼ばれることもあります。
しかし2010年の欧州ソブリン危機が起きて以来、その危うさが表面化して基軸通貨としての地位も揺らいでいます。
とはいえ、現在では世界においてユーロはなくてはならない通貨となっているため、ある日突然ユーロの価値が崩壊するようなことはないでしょう。
ユーロに関わる政策は欧州中央銀行(ECB)が担っています。
そのためユーロの価値に関しては欧州中央銀行の政策決定が非常に大きな意味合いを持ちます。
ユーロを取引するのであれば、欧州中央銀行から発表される内容については注意しておく必要があります。
米ドルの特徴
米ドルはアメリカ以外にも一部の国や地域において公式の通貨として採用されるほど信用力のある通貨です。
その信頼性の高さから、国際的な決済においては米ドルを使うことが慣習となっており、基軸通貨としての確かな地位を築いています。
米ドルは1971年のニクソンショックが起きるまでは金本位制が取られていましたが、それ以降は管理通貨制度のもとに発行が続けられています。
米ドルはその信用力の高さから戦争や紛争など有事の時に買われることが多く、「有事のドル買い」と呼ばれる現象が見られました。
しかしながら、2001年9月11日に起きたアメリカ同時多発テロの時に、米ドルを発行しているアメリカ本国が攻撃されたということもあり、米ドルの価値が下落しました。
それ以降は戦争・紛争などはテロ戦争であることが多く、アメリカの戦費支出による財政悪化が嫌気されるため、「有事のドル売り」が見られるようになりました。
この際にはユーロ、円、スイスフラン、地金などの貴金属が買われるという現象がしばしば見られます。
米ドルが絡まない通貨ペアの取引においては、その通貨ペアは直接取引されるわけではなく、間に米ドルを挟んで取引されます。
例えばポンド円を取引する場合、円を売ってポンドを買うという取引は、実際には円を売ってドルを買い、そのドルでポンドを買う、という2つの取引をしていることになります。
従ってドルの価値は全通貨ペアに対して影響力を持っていることになります。
このように、間に米ドルが挟まった取引はクロス取引と呼ばれます。
世界最大の取引量
ユーロドルは世界最大の取引量を誇る通貨ペアです。
ユーロドルの通貨ペア別取引量シェアは2016年において世界全体で23.05%を占め、堂々の第1位です。
一方で米ドル円は2位で17.72%、3位はポンドドルで 9.24%。
日本においては2017年1月の通貨ペア別取引量シェアは米ドル円が圧倒的に多く72.44%であり、2位がポンド円で10.44%、3位がユーロドルで4.11%です。
ユーロドルに影響力のある指標
ユーロドルの通貨ペアに対して影響力の強い指標について解説します。
米雇用統計
米雇用統計(失業率および非農業部門雇用者数)はユーロドルに対して最も影響力の強い指標です。
米雇用統計は毎月月初めの金曜日に発表される指標であり、この日はFXトレーダーにとってはお祭りの日です。
雇用統計前後ではユーロドルとドル円の二つがFXトレードの中心となります。
なぜなら世界中の投機家は米雇用統計に合わせてこの二つの通貨ペアに対して一斉に注文を出してくるからです。
この二つの通貨ペアは逆相関の値動きをするため、2つ並べて値動きを追うと予測精度が高まります。
アメリカの経済指標
雇用統計以外のアメリカの重要指標としては、GDPやFOMC(連邦公開市場委員会)の声明などがユーロドルに対して特に影響力が強いです。
アメリカの国内総生産を示している米国GDPは、事前の予測とわずかに乖離しただけでも相場反転の起点になることも多いです。
従ってトレンドが出ているからといってGDPの発表を無視してしまうと、思わぬ損失を出してしまうことにもなりかねません。
GDPが発表された場合は、新たなトレンドが確認できるまでは取引を控えた方が良い場合もあります。
FOMCはアメリカの中央銀行にあたるFRB理事及び連邦準備銀行地区総裁らによって行われる会議のことを指します。
FOMCは一年間のうちに8回開催され、その度に米ドルの供給料や国債の売買オペレーションについての決定がなされます。
つまり米ドルの供給量そのものを調整するのがFOMCです。
FOMCの決定次第で米ドルの価値が高くも低くもなるため、FOMCの発表ももちろん重要でありますし、FRB議長がどのような発言をするかによっても相場は影響を受けます。
ヨーロッパ主要国の経済指標
ユーロに対して強い影響力を持っているヨーロッパの主要国、例えばドイツやフランスなどの経済指標はユーロドルに影響力を持っているため、注視する必要があります。
例えばドイツとフランスの失業率などは予測値を大きく外れていた場合にユーロの価値を大きく変化させるので、見逃さないようにしましょう。
またユーロの政策金利や金融政策を決定している欧州中央銀行からの発表についても注意を怠らないようにしたいところです。
欧州中央銀行はユーロの価値そのものを決める大元であるので、特にユーロ採用国が経済危機に陥っているような時には途方もない影響力を持つことになります。
ユーロドルの値動きの特徴と注意点
ユーロドルの値動きの特徴と取引上の注意点について解説します。
力強いトレンドを形成しやすい
ユーロドルは取引高が多いため、一度動き出せば力強いトレンドを示しやすいです。
そのため、テクニカル指標での予測も当てはまることが多く、デイトレードに向いています。
ユーロドルはトレンドが出始めた場合は絶対に逆らってはいけません。
ユーロドルで利益を取りたければ順張りが鉄則です。
連動する指数
ユーロドルに関してはニューヨークダウとDAX(ドイツ株価指数)あたりとの連動を考慮した方が良いです。
ニューヨークダウはもちろん米ドルに影響を及ぼしますし、DAXはユーロに対して強い影響力を持っています。
最近ではギリシャの債券市場についても監視が必要だとも言われています。
とはいえ、実際にトレードする場面ではこれらの指数を考慮しようとすれば途端に情報量が増え、判断が逆に鈍るケースもあります。
従ってこれらの指数を参考にするかは意見が分かれるところです。
経済全体の値動きを把握して長期的な予測を立ててトレードしたいなら参考にすれば良いでしょうし、余計なノイズを混ぜたくないなら除外して考えると良いでしょう。
自分の取引スタイルや取引時にどのようなことを考えるかに合わせて選んで欲しいと思います。
ドル円とは逆相関する
ユーロドルの値動きの大きな特徴として知られるのが、「ユーロドルはドル円とは逆相関する」ということです。
チャートを並べて見れば一目瞭然ですが、ドル円チャートが上昇している時にユーロドルは下落します。
この関係をよく知っていれば二つのチャートを並べることでユーロドルの値動きをより高い精度で予測することができるようになります。
ストップ狩りに注意
ユーロドルは強いトレンドを示す一方で、ストップ狩りがよく見られる通貨ペアでもあります。
ストップ狩りとは、ロスカット注文を故意に発生させて価格の急落や急騰を狙う手法を指します。
「この抵抗は突破されることはないだろう」と考えていたとしても、まるでそれを見透かしたかのように抵抗帯をたやすく突破してくることも少なくはありません。
そしてその直後に逆方向に動き高値(または安値)更新するような場面もよく見られます。
従ってユーロドルに慣れていないと大きな痛手を負ってしまうトレーダーも少なくありません。
一方でユーロドルにそのような性質があることを知っていればその値動きを逆に利用して利益を取ることも可能です。
とにかくまずはユーロドルの値動きの特徴をよく掴むことが大事です。
安値更新からの高値更新、または逆に高値更新からの安値更新の値動きを味方に付けられるようになるでしょう。
この値動きが出やすいのは雇用統計などのインパクトの大きなイベントや要人発言の直後などです。
従って、ユーロドルの値動きに慣れないうちはそれら大きなイベントがある前後では取引をしない方が賢明でしょう。
ユーロドルの投資戦略
ユーロドルの利益を上げやすい時間帯や資金効率のよい投資スタイルについて解説します。
取引時間
ユーロドルを取引するのであれば、欧州時間とアメリカ時間が値幅を取りやすいです。
日本時間であれば下の図のようにほとんど値動きのない日が多く、効率が良いとは言えません。
一方で欧州時間に入った途端にユーロドルはダイナミックに動きます。
その値動きはアメリカ時間に入っても続き、朝方まで収益チャンスはあります。
欧州時間の場合は、ヨーロッパの各国から様々なニュースが飛び交うため、一方向の動きというよりも上下運動を繰り返すことが多いです。
一方でアメリカ時間は一方向的な値動きをすることも少なくありません。
また、欧州時間とアメリカ時間が切り替わる21時30分前後は雇用統計などの大きなイベントがあるため、ボラティリティ(値動きの激しさ)が跳ね上がることも多くあります。
取引スタイル
ユーロドルはスプレッド(売値と買値の差)も小さく、また値動きも大きいためスキャルピングでもデイトレードでも利益を取れます。
特におすすめは半日や1日分の値動きを追っていくデイトレードです。
テクニカル分析での予測通りに動くことが多いので、ユーロドルは資金効率的にデイトレードに適しています。
また、ストップ狩りなどがあるものの、一度トレンドが形成されると基本的にはトレンドが支えられながら動いていくので順張りで攻めるのが鉄則となります。
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