豪ドル円は、米ドル円に比べて相対的に値動き(ボラティリティ)が激しく、日本時間の日中に特に活発な取引がされる銘柄として人気があります。
豪ドル円は、オーストラリアという国を反映した通貨であり、オーストラリアと経済的に結びつきが強い中国と日本の影響を受けやすい通貨でもあります。
本記事では豪ドル円の特徴や影響力の大きな指標、利益を上げやすい投資戦略などについて解説します。
Contents
豪ドルの特徴
通貨の特徴は、国の経済がどのように成り立っているのかで定まります。
ここでは、豪ドルの特徴を解説します。
資源国通貨
豪ドルを発行するオーストラリアは、世界でも屈指の資源国です。
鉄鉱石、金、亜鉛、原油、石炭などさまざまな資源が採掘され、世界中に供給しています。
そのため、資源の需要に合わせて豪ドルの価値も変動しやすいです。
特に原油が買われている時は、豪ドルも買われる傾向にあります。
また、資源国の通貨は、資源の輸出先の経済に大きな影響を受けやすいのです。
従って、主な輸出先である中国や日本の景気に敏感に反応します。
高いスワップポイント
豪ドルは、他の国に比べてスワップポイントが高いことで知られています。
[aside type=”normal”]スワップポイントとは、通貨ペアの金利差から計算されるポイントのこと[/aside]金利が高い通貨を買った時にスワップポイントを取得でき、逆に金利が低い通貨を買った時はスワップポイントがマイナスとなります。
豪ドルは政策金利(中央銀行の金利)が他国よりも高いため、スワップポイントも高いのです。
米ドル円と比べても、豪ドル円のロングポジションの方がスワップポイントを多く取得することができます。
また、オーストラリアは政治的・経済的に安定しており、テロの標的になりにくいです。
これらの理由から、豪ドルはスワップポイントを狙った長期安定投資の対象になりやすいのです。
日本時間の午前中によく動く
オーストラリアにあるシドニー市場は、時差の関係で東京市場よりも早い時間に開きます。
そのため、豪ドルの売買は日本時間における午前中に集中する傾向にあります。
また、オーストラリアの経済指標も、日本時間の午前中から昼過ぎくらいまでに公表されるものがほとんどです。
日本時間の夕方から夜間にかけて指標が発表される、米ドルやユーロとは取引が活発になる時間が異なります。
それらの違いもしっかり把握した上で、売買することが求められます。
豪ドル円に影響力のある指標
豪ドル円は、経済の関わりが深い中国、日本、アメリカの影響を強く受けます。
もちろん、オーストラリア自身の指標の影響が最も強いのは言うまでもありません。
従って、豪ドル円の取引ではオーストラリア、中国、日本、アメリカの指標に注意する必要があるのです。
オーストラリアの指標
オーストラリアの指標で特に注目度が高いのが、以下の指標です。
指標 | 発表時期 |
RBA政策金利 | 毎月第一火曜 |
新規雇用者数・失業率 | 毎月中旬 |
小売売上高 | 毎月上旬 |
CPI(消費者物価指数) | 1・4・7・10月下旬 |
RBAは、オーストラリア準備銀行のことで、RBA政策金利の発表時は毎回緊張が高まります。
ここ数年で政策金利が大きく変動したのは、オーストラリアとニュージーランドくらいなものです。
豪ドルはスワップポイントも高いので、政策金利への期待も高いです。
例え政策金利が変わらなくても、RBA総裁のコメント内容次第では相場が大きく変動することもあります。
200~300pips(通貨の値幅)程度は簡単に動くので、油断はできません。
新規雇用者数・失業率への注目も高いです。
この数値は経済の活況状況をダイレクトに反映するので、豪ドルに限らず全通貨において雇用者数や失業率は注目されます。
小売売上高とCPI(消費者物価指数)は、企業や国民がどれだけ買い物に積極的かを示す指標です。
特にCPIは、前年よりプラスならインフレ傾向、マイナスならデフレ傾向と判断されるので、近い将来の経済状態を占う上で重要視されます。
RBAは、年率2~3%のインフレ目標を掲げているので、CPIが高ければ利上げ、低ければ利下げをする可能性が高くなります。
中国の指標
豪ドル円に影響の強い、中国の指標を以下にまとめます。
指標 | 発表時期 |
GDP(国内総生産) | 4・7・10・1月中旬 |
CPI(消費者物価指数) | 毎月10日頃 |
小売売上高 | 毎月10日頃 |
固定資産投資 | 毎月10日頃 |
中国では、GDP、CPI、小売売上高、固定資産投資などの経済指標が注目されます。
中国のGDPは、2011年には日本を追い抜き、世界第2位となりました。
中国から発表されるGDPの数値は信用できないとも言われますが、それでも中国が経済大国であり、著しい成長をしていることは間違いありません。
そのため、オーストラリアの経済も中国経済に大きな影響を受けています。
固定資産投資とは、農村部を除く都市部の建築工事および設備工事費を合わせたものです。
値が高いほど建築や設備工事が活発であり、経済に勢いがあると判断できます。
中国は、北京オリンピックが開催された2012年以降、GDPが横ばいあるいは後退しているのではないかと言われており、中国のバブル景気が近いうちに崩壊するのではないかと心配されています。
日本の指標
豪ドル円を取引する上で注目すべき、日本の指標を以下にまとめる。
指標 | 発表時期 |
日銀金融政策決定会合 | 毎月1~2回 |
完全失業率・有効求人倍率 | 月末または月初 |
日銀短観 | 4・7・10・12月 |
日本で発表される指標は、ほとんどの場合、豪ドル円に対して大きな影響を及ぼすことはありません。
ただし、極端な円安や円高に傾いた時などに、日銀総裁が大きな決定を下せば極端な値動きになる場合もあります。
アメリカの指標
アメリカの指標は、全通貨に対して大きな影響を及ぼします。
豪ドル円も例外ではありません。
アメリカの指標は影響力の大きなものが多いですが、その中でも特に注目度が高いものを紹介します。
指標 | 発表時期 |
FOMC議事録 | 政策決定日の3週間後 |
FOMC政策金利 | 年8回 |
雇用統計・失業率 | 毎月第1金曜日 |
GDP(国内総生産) | 1・4・7・10月の21~30日 |
FOMC(連邦公開市場委員会)では、政策金利や為替レートの誘導目標などが議論されます。
ここでの議論がその後の金融政策になって来るので、FOMC議事録は将来の金融政策を知る上で非常に重要な資料となります。
雇用統計・失業率は、毎月発表されますが、発表される時は毎回為替関係者にとってお祭り騒ぎとなります。
雇用統計・失業率が予想から大きく外れている場合は、トレンドが反転したり、急騰や急落をすることも少なくありません。
為替相場や株式相場のトレンド変化の起点になったことも、過去に何度もあります。
FX取引をする上で、アメリカの雇用統計・失業率を最重要指標なのです。
アメリカの指標は、21時から翌午前2時くらいまでに発表されます。
この時間、オーストラリアは完全に夜で市場は閉まっていますが、アメリカの指標が発表されると他の通貨ペアに遜色ないくらいに大きな変動を見せます。
豪ドル円で注意すべきこと
豪ドル円の通貨ペアは、値動きが大きく魅力的です。
一方で、取引する際には注意すべきこともあります。
ボラティリティが高い
豪ドル円のボラティリティ(変動の激しさ)は、ユーロ円や米ドル円に比べると相対的に大きい傾向にあります。
その分稼ぎやすいとも言えますが、急激な値動きも多いのでリスクも高いです。
特に下げる時は、場合によっては暴落のような状態になることも少なくありません。
毎回ロスカットをしっかり入れるようにし、リスクはきちんと管理するようにしましょう。
売りで入るとスワップポイントでマイナスになる
豪ドルは金利が高いので、豪ドルを買えばスワップポイントで稼ぐことができます。
しかし、これは逆に言うと、豪ドルを売ってしまうと高いスワップポイントを取られることを意味します。
豪ドル円で言えば、豪ドルを売って円を買った時の状態です。
長期間そのポジションを維持すれば、スワップポイントだけでもバカにできない損失を受けることになります。
デイトレードしかしないのであれば、あまり気にする必要はありませんが、週単位や月単位でポジジョンを保有することを考えるなら豪ドルを売りで入るようなことは避けた方が良いでしょう。
スプレッド割合が大きい
豪ドル円のスプレッド(ASKレートとBIDレートの差)は、米ドル円やユーロ円に比べて大きい傾向にあります。
以下のスプレッドのASKレート(買値)に対する割合を見てください。
これは、とあるFX業者の2017年7月25日のデータです。
通貨ペア | ASKレート | スプレッド | スプレッド割合 |
米ドル/円 | 111.109 | 0.003 | 0.000027 |
ユーロ/円 | 129.351 | 0.006 | 0.000046 |
豪ドル/円 | 88.044 | 0.007 | 0.000080 |
豪ドル/円のスプレッド割合は0.000080で、米ドル/円やユーロ/円に比べて2倍前後あることが分かります。
全てのFX業者に共通して、豪ドル/円のスプレッド割合は米ドル/円やユーロ/円に対して大きいです。
通貨レートの変動幅は、通貨レートの数値に比例する傾向にあります。
通貨レートが大きな値なら大きな値幅で動き、通貨レートが小さな値なら小さな値幅で動くのです。
FX取引で利益を上げる場合、エントリーしたASKレート(買値)よりもBIDレート(売値)が高くならなければなりません。
従って、スプレッド割合が小さいほどBIDレートはASKレートを上回りやすく、利益を出しやすいのです。
豪ドル/円は、大きく動く時は大きな利益を得やすいですが、スプレッド割合が大きいために小さな値幅で利益を出すスキャルピング(数秒から数分で得られる小さな値幅で利益を確定する手法)のような投資方法では利益を出しにくいのです。
豪ドル円の投資戦略
豪ドル円の投資戦略について、豪ドル円に相応しい投資家および利益を出しやすい投資方法を解説します。
豪ドル円に相応しい投資家
豪ドル円を取引対象に選ぶなら、オーストラリア、中国、日本の指標が発表される時間帯に取引できることが望ましいです。
これらの指標は、日本時間の9時から14時くらいの間で発表されるので、一般的な日中に働くサリラーマンでは難しいでしょう。
夜型の勤務をしている人に、適した通貨ペアです。
ヨーロッパやアメリカの市場が活発になる夜でも豪ドル円は動きますが、その時間帯であればよりスプレッドの低いユーロ円や米ドル円を扱った方が良いでしょう。
豪ドル円で利益を出しやすい投資方法
豪ドル円では、10分から1時間程度の値動きで利益を確定する投資方法が利益を出しやすいと考えられます。
前述のように、豪ドル円はレートに対するスプレッド割合が大きいので、わずかな値動きを狙うスキャルピングではコストが大きく利益が小さいです。
一方で、10分から1時間程度のトレンドを狙うならば、200~300pips程度は頻度に動くので利益を上げやすいです。
豪ドル円の大きなボラティリティを最大限に生かして、少し長めのトレードを意識すると大きく稼ぐことができるでしょう。
スワップポイントを狙う
利益はあまり追求せず、少額でも安定して収益を上げられればよいと考えているなら、豪ドルのスワップポイントを狙った長期運用をするのも一つの手です。
高いレバレッジ(資金を証拠金として、資金の何倍もの通貨を取引すること)では、長期運用はリスクが高いですが、しかし極端な話最低レバレッジの1倍(証拠金と同額の取引を行う)であればリスクも低く運用できます。
最後に
豪ドル円はボラティリティが大きく、またスワップポイントも大きいので、投資対象としては非常に魅力的です。
一方で、取引コストが米ドル円やユーロ円に比べて高めという、不利な面も持ち合わせています。
豪ドル円を取引する時には、それらの特徴を踏まえた上で適した戦略を選ぶ必要があるでしょう。
また、豪ドル円は資源国通貨なので中国の影響が大きく、日本時間の日中に取引が活発になります。
従って、豪ドル円は日中に取引が可能な投資家におすすめしたい通貨ペアです。
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