ソーシャルレンディング投資を始めると、どのファンドに投資をしていくのか、実際にファンドの内容を読んでいく事になります。
その際、匿名組合と言う言葉を目にしたことがある方も多いのではないでしょうか?
他の投資ではあまり耳にすることはないキーワードですが、この匿名組合と言う言葉はどんな意味なのか解説をしていきます。
匿名組合とは何なのか
匿名組合は通称TKとも呼ばれています。
組合と言うと、投資する人何かしらの組合に強制的に加入させられてしまうかのような錯覚をしてしまいますが、実際には契約の意味を指し、融資を受ける借り手(ボロワー)やソーシャルレンディング運営会社にお金を出資することで利益の一部を返すことの契約の事を指しています。
組合というフレーズが独り歩きしそうですが、実際には契約の事を指し、最近では匿名組合の事をしっかり匿名組合契約と記載している場合もあります。
ソーシャルレンディング業者に対して投資をする人の事を匿名組合員と呼び、法律的な意味合いでは商法第535条から、
”匿名組合契約は、当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生じる利益を分配することを約することによって、その効力を生じる”
と言うルールから決められています。
匿名組合の特徴としては誰が投資したのかわからないという点です。投資をしたお金に色を付けることなく、融資をしていくため”匿名”と言う名が使われているわけです。
株式投資だと取引履歴や株主総会を通して、誰がどれだけ株をもっているかがわかる訳ですが、ソーシャルレンディングはどんな人がどれくらい投資しているのかわからない点で大きな違いがあります。
投資家から集まったお金の行方
集めたお金に関しては、その後ソーシャルレンディング業者がファンドに対して融資する必要があり、一定期間ファンドを運用した後、ファンドから得た利息を含めた投資金を匿名組合である投資家たちに分配をしていきます。
法律的には投資家と言うよりも、匿名組合契約で出資した方と言った方が適切と言えるでしょう。
匿名組合の解散
前述の通り、匿名組合とは契約の事を指すために、ファンドの運用が終わり次第、解散となります。
匿名組合の解散としては以下の5つのケースが存在します。
- お金が投資家の元へ返金された事
- 予め規定されていた償還期間が到来した事
- ファンドが貸し倒れによって返金が不可能になった事
- 組合員である投資をした人が破産した事
- ソーシャルレンディング業者が倒産した事
この中で解散の最も多いパターンとしては、当然ながら①のお金が投資家のもとへ返金された事による解散です。
注意点としては、投資したお金の元本割れが生じた時でも、お金を返金する事で解散と見なされる点です。
商法第542条の匿名組合契約の終了に伴う出資の価値の返還においては、
”匿名組合契約が終了したときは、営業者は、匿名組合員にその出資の価額を返還しなければならない。ただし、出資が損失によって減少した時は、その残額を返還すれば足りる”
と記載されているために、投資をする方にとってはこの商法が投資に関わっている事を事前に知っておくべきでしょう。
2番目に多いパターンとしては、予め規定されていた償還期間が到来した事による匿名組合の解散となります。
この辺りはソーシャルレンディング業者の対応にもよりますが、予め予定された満期が到来した時点で、いまだ約束の金額の一部を投資家が受け取れてない状況においては、期間を延長として匿名組合の契約を延長するケースもあります。
(参考)
ソーシャルレンディングで支払遅延が起こったケーススタディ
商法上ではそのまま解散できるため、ソーシャルレンディング業者によって対応方法が異なるところでもあります。
その他のケースは非常に稀で、ファンドの貸し倒れや組合員である投資家の破産、ソーシャルレンディング業者が倒産したことで解散するケースも匿名組合の法律上のルールで解散と言うことになります。
匿名組合で投資をすることのメリット
匿名組合の契約形式で投資をするメリットとしては、誰が投資したのかわからない匿名性や投資した後は何もしなくていい立場であることです。さらにトラブルが起きたとしても投資したお金以上に被害が及ばない点もメリットしてあります。
匿名組合は投資をしてリターンを得るだけで、責任的なものをあまり負いたくない方には向いている立場とも言えるでしょう。
匿名組合で投資をすることのデメリット
匿名組合でのデメリットとしては大きく2つあると言えます。
1つは投資先に対して要望や提案ができないことです。株式投資をしている投資家とは違い、株主総会のような意思決定機関で発言をするような機会は用意されていません。
株主総会で発言が出来る株主という立場と、ただ投資をする匿名組合員という立場の違いは、投資する前には理解をしておくべき事項です。
もう1つは先ほども少し触れましたが、ソーシャルレンディング業者が倒産しても投資したお金を回収できない点があります。
投資であるためにその辺りは理解している方が多いと思われますが、預金でない以上預金保険制度の適用もされないことと、匿名組合ではそのような投資資金の回収を図ることが難しいことも理解しておくべきでしょう。
まとめ
匿名組合は契約である事を理解して投資をする事で、株式投資とは違う立場である事が理解できます。
匿名組合員は、商法第536条の第4項にて、
”匿名組合員は、営業者の行為について、第三者に対して権利義務を有しない”
と明記されているため、万が一、ソーシャルレンディング業者の倒産に伴い何か金銭的な請求が届いたとしても、そのような請求には応じなくてよいということも理解しておくべき知識です。
投資する人にとってはこの匿名組合での立場を理解しておく事で無用なトラブルを避けることもできるでしょう。
新しい投資の方式であるソーシャルレンディングであるからこそ、基本的な仕組みを理解して投資を始められることをオススメします。
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